動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などと言った循環器系疾患の原因として、内皮細胞と血流による刺激や血球の内皮細胞への付着などが関係すると考えられている。そこで、本研究では、せん断応力などの流れによる刺激と内皮細胞の応答との関係を詳細に調べるため、せん断応力を負荷しながらマイクロ流路内での内皮細胞の培養方法を検討した。特に、細胞の接着力を高めるためにマイク流路壁面の修飾方法や培養液の還流方法を検討した。本学所有のマイクロ加工装置を用いて作成した幅400μm、深さ75μmのPDMS製マイクロ流路内チップ内で0.1Paのせん断応力を負荷しながら培養し、コンフルエントまで達することができた。マイクロ流路内でせん断応力を負荷しながら培養した細胞の形態変化を詳細に調べた。その結果、細胞密度が小さい増殖期では、細胞の伸長と配向が見られた。細胞密度が増加するにつれて、伸長が減少し配向が解消され、静置培養に比べ有意に細胞が大きく伸長が観察された。さらに、マイクロPIVシステムを用いて細胞近傍の速度分布を計測した。せん断応力を負荷しながら培養し、コンフルエントになった内皮細胞近傍の複数の焦点位置で計測を行った。粒子径1.0μmの蛍光粒子を培養液に混入し、ダブルパルスレーザにより流れを可視化した。得られた結果より、細胞の3次元形状による流れの回り込みなどが確認された。せん断応力により細胞の高さが小さくなり、せん断応力の勾配が小さくなるように変形していると考えられており、隣接する細胞形状が細胞近傍の微視的な流れが大きく変化すると考えられる。
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