研究概要 |
(疎水性ガス拡散層水分排出モデル) : 固体高分子形燃料電池のカソード側ガス拡散層(GDL)を、疎水性円管流路が面に垂直に多数並列に並び、横孔で連通した構造としてモデル化し、GDL内水分移動・充填挙動と、空隙における気体拡散についての解析を行い、PEFCのフラディング機構を考察した。またこの解析で使用するGDL内の等価細孔径分布を、圧力を変化させた通水実験を行って求めた。 GDL内部での凝縮水は、連通異径孔間では、毛管力によって大径孔から順に充満していき、酸素拡散流路が減少し、酸素拡散量が減少し出力が,低下する。電流密度が1A/cm^2のときに1cm^2から発生した水を、最大孔径26μmの孔7本を通してチャネルへ排出するときの圧損は10Pa程度であるので、従来GDL内水分充填率評価に用いられてきたレベレット関数を用いると、水分充填率は非常に小さいことになり、フラディングは起こらないことになる。 現実にはフラディングが起こっているので、別のモデルが必要となる。GDL内に水排出流路以外の空隙の存在を考えるとき、これらが大径孔と連通していないと、その内部の水は内径に応じた高圧となり、レベレット関数より比較的高い水充満率となる。このような独立内部空隙を有するGDLモデルが必要、というのが本研究の結論である。 (親水性ガス拡散層水分排出モデル) : 水分除去性能の向上が期待できる速乾繊維類似の親水性GDLを対象とし、表面に繊維軸に平行なV溝を有する親水性繊維1本の一端を水の表面に垂直に立て、空気の強制対流中に置いた場合の、繊維周りでの蒸発量と液膜形状、液膜長さを数値モデル化した。またこの繊維モデルを多数本平行、均等に配置した親水性GDLモデルにより、GDL単位面積あたりの蒸発量を求める手法を開発した。この結果、このような親水性GDLにより電池の生成水分を十分に排出する能力があることが示された。
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