研究概要 |
本研究は,金属表面に製作されたマイクロキャビティ近傍に生ずる擬似近接場光強度とその波長選択性を,改良型SNOM(走査型近接場光学顕微鏡)を用いて明らかにするとともに,近接場効果を効果的に利用できる熱光起電力電池を独自に製作し,これらを組み合わせて新規なエネルギー変換システムを構築することを目的としている.通常のSNOMは大気圧常温下で作動する.そこで,本年度は,10^<-1>Paオーダーの真空下で動作可能な高温真空型SNOMを開発した.これにより1000Kの金属表面も酸化することなく、また気体の熱伝導によるプローブへの熱負荷も軽減され、その表面に生ずる近接場光をシリカプローブへ導くことが可能となった.この真空容器内には1000K以上に加熱できるセラミツクヒーターとそれをふく射断熱できる鏡面水冷ジャケット,さらに位置決め用の粗動電動マイクロメーター,プローブの高精度位置制御用のピエゾアクチュエータ山が装着されている.このヒーター上には本年度製作したニッケル金属製のマイクロキャビティ(0.5μm×0.5μm×0.5μm)がセットされる.なお,このキャビティ表面から放射される遠隔場成分のふく射において,そのカットオフ波長である1μmより短い波長では放射率が1に近く,それより長い波長では鏡面放射率の0.1程度であることが本年度で明らかにされた.一方,既存の設備である分子線エピタキシャル装置を用いて,1.8μmまでの赤外線を電気に変換できるGaSb系の熱光起電力電池を製作した.キャリア濃度を測定し,電池として機能することを確認するとともに,その電池表面の凹凸がおよそ0.01μm程度であることを明らかにした.すなわち,10ナノオーダーまで電池とマイクロキャビティ表面を近づけた近接場エネルギー変換システムが可能となることが示唆された.
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