研究概要 |
本研究の最終年度に当たる本年度においては,生体内輸送機構の解明のための熱分散のモデリングと実験的検証に関する総括的検討を行った. まず,実験的側面から気道の輸送現象を把握すべく,気道流路のモデルとして矩形断面を有する水路を作成し,ローダミンB水溶液を用いた拡散係数の測定を行った.二箇所の可視化画像をモーメント法に基づき画像処理することで機械的分散が及ぼす見かけの軸方向拡散係数への影響を調べた.種々の実験条件の下で得られた見かけの拡散係数のデータを処理することで,以前行った直接数値シミュレーションの結果と良好な一致を示すことが分かった. 機械的分散が血流に及ぼす効果については,局所体積平均理論を用いて検討した.得られた生体伝熱の基礎式は,機械的分散の効果が血液の見かけの熱伝導率の増加として表現できることを示唆している.また,気道における血液灌流の効果が多孔質体理論を用いることで,適切に表現できることを示し,気管の23分岐の理由付けを行った.この成果はASME Journal of Heat Transferに公表された.さらに,静脈と動脈の血流が対向して流れる効果について検討し定式化も行った.その結果,機械的分散の効果および血液灌流の効果に加え,対向流の効果が血流の見かけの熱伝導率の増加として表現し得ることを示した. 以上を通して,機械的分散が生体内輸送機構に及ぼす機械的分散の効果を明らかにした.
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