研究概要 |
新たな温熱快適性指標である人体熱負荷量を定義し,屋外空間への適用について議論した.人体熱負荷量は,代謝量,機械的仕事量,正味ふく射量,顕熱損失量,潜熱損失量からなる.この指標は,人体と周囲環境間で行われる熱の授受が人体の快適感や不快感に影響を及ぼすとの考えから,人体熱負荷量は人体熱収支に基づいている.また,体感指標として必要とされる環境情報および様々な生理量・熱物性などを含有している.はじめに,温熱快適感の解釈として,温冷感と同等であることを被験者を用いた実験により明らかにした.これをもって,本研究では,温熱快適性について温冷感を用いて議論してゆく.次に,人体熱負荷量の指標としての考え方や精度を検証するため,まず定常状態における結果の検討を行ない,国際規格化されている体感指標と同等程度以上の精度で温熱環境を予測できることを示した.さらに屋外空間など非定常性の強い空間へと適用範囲を広げるため,代謝量,ふく射量,気温,湿度の要素をそれぞれステップ状に変化させ,その応答を観察した.人体熱負荷量増減に沿って温冷感が増減する関係が確認でき,定性的には人体熱負荷量と温冷感の間に関係があることを示した.また,定常状態に達するまでに過渡反応として温冷感の過剰応答が観察され,人体熱負荷量を用いた温熱環境解析するにあたり時間的な制約があることを示した.
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