研究概要 |
衣服素材の熱移動,水分移動,日射特性,対流熱伝達率を実測し,人間の温冷感に与える影響を熱の流れから考察する.まず,人体の温熱快適性に与える衣服の影響を図るために被験者実験を実施し,衣服が関わる要素として,熱・水分移動および日射遮蔽が大きいことを特定した.衣服は人体(発熱体)と周囲環境の間の熱交換の抵抗として作用しており,それを熱通過率および湿気通過率として測定し,検討を行なった.続いて,衣服を介した熱の流れを把握する目的から反射率,透過率,吸収率といった日射特性および対流熱伝達率の計測,検討を行なった.様々な外部要因を考慮して,熱通過率,湿気通過率,対流熱伝達率は定式化し,また,日射特性を特定した.最終的に,衣服の熱収支モデルにより,被験者を用いた実験と同様の熱の流れを再現し,被験者の体感に及ぼす衣服の影響を検討した. 得られた知見を基に数値解析を用いて代表的なヒートアイランド対策手法の有効性について議論した.不均一かつ非定常状態の温熱環境にも適用が可能である65MNモデル(65分割体温調節モデル)に改良を加え,屋外空間に適用できるようにした.この数値人体熱モデルは,伝導,対流,放射,蒸発による熱交換を考慮しており,生理量と部位ごとの皮膚温を予測するモデルである.さらに,環境モデルとして2つのモデルと結合し代表的なヒートアイランド施策の効果を検討した.一つ目のモデルは,一次元熱伝導方程式を用いた手法であり,もう一つはビル空調や建物高さ,大気側では乱流モデルを取り入れたより高度なモデルである.結果として,日射による熱負荷の低減が都市空間の温熱快適性向上に大きく寄与することが分かった.また同時に,高反射率材料などは都市全体の熱負荷削減には貢献するものの,日射の照り返しにより温冷感には悪い影響を及ぼすなど,その適切な試行の必要性がわたった.最後に,情報の発信ツールとして温冷感を基にした都市気候図を作成した.
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