研究概要 |
本研究では,化粧品の粒子デザインの観点から,「皮膚表面の微粒子が皮膚の光伝播に与える影響」を予測できる解析モデル,および,シミュレータの開発を最終的な目標としてあげている.この実現のため,平成19年度では,まず,皮膚・空気界面での光挙動に与える皮膚のキメ(皮丘,皮溝)の影響を明らかにするために,キメ構造を表面に転写したプリズム作成し,キメによる光散乱の詳細を調べた.また,これと同時に,キメ構造の解析モデルを考案,この実験結果との比較から,その妥当性,有用性を検討した.この結果,光散乱は0.1-0.5mm度の大きなキメ構造よりも,むしろ,それよりも小さい微細な構造に支配されることが明らかになった. これらの研究と並行して,皮膚内部の光伝播の詳細を知るための,皮膚の光物性計測装置の開発を行った.この装置は,縞状の入射光束を皮膚に照射(多重スリット像を投射)させ,反射される光強度の空間分布を,紫外光から近赤外光にいたる広い波長範囲で計測を可能とするもの,非一様な縞状の入射光束得るための光学系と,反射光を分光すると同時に,その強度分布を記録する光学系を有する.研究初年度にあたるこの年度では,波長300nmから1600 nmに至る広い波長領域で計測を可能とする,分光部の設計,製作を中心に装置開発を行った.分光部の妥当性を検証するために,2方向,半球反射率測定用の光源部,試験部を作成し,その妥当性を検証した.さらに,この年度では,化粧品粒子の散乱性質を把握するための解析コードの開発を行った.開発したコードが,3次元の複雑な粒子構造に対応可能であることを確認した.
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