研究概要 |
本研究では,化粧品の粒子デザインの観点から,「皮膚表面の微粒子が皮膚の光伝播に与える影響」を予測できる解析モデル,および,シミュレータの開発を最終的な目標としてあげている.昨年度までは,皮膚・空気界面での光挙動に与える皮膚のキメ(皮丘,皮溝)の影響を明らかすべく,キメ構造を表面に転写したプリズム作成し,キメによる光散乱の詳細を実験的に調べ,これを再現できる解析モデルを考案,その妥当性を検証した.今年度は,このモデルを用いて,皮膚のキメ構造および化粧粒子の皮膚への付着情況が,見え方に与える影響を考察した. これらの研究と並行して,昨年度までは,皮膚内部の光伝播の詳細を知るための,皮膚の光物性計測装置の開発を行ってきた.具体的には,装置の分光部の設計,製作,縞状の入射光束(多重スリット像の投影)を実現させるための,光源部の設計,製作を行ってきた.その結果,紫外光から近赤外光にわたる広い波長範囲で,ふく射物性推定の基礎となるデータを取得することに成功した.この結果を基に光物性を推定することも可能となったが,推定には,長時間にわたる逆解析を要していた.本年度では,特に,物性値推定を迅速に行うための処理システムを開発し,短時間で,紫外光から可視光の領域で,皮膚の光物性を計測できるシステムを完成した.さらに,本年度では,これまで,推定できていなかった散乱位相関数を計測するための装置開発を行い,実際に,培養皮膚を対象に,その測定を行った.
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