研究概要 |
ピエゾ素子を利用した微小振動子とこれに付随するマイクロ触覚プローブから成るシンプルな構造を有するセンサー, および立体ダブルL型カンチレバー状に加工した振動子に, 直交3軸方向それぞれの変位が制御できるように複数のピエゾ素子を接着し製作した3次元アクチュエータおよびそのコントローラーを開発した。本センサー・アクチュエータ複合デバイスを, 高精度マイクロマニピュレータ・倒立型位相差顕微鏡に組み込むことによりシステム構築を行った。 次にCytochalasin Dを利用して生細胞の細胞骨格であるストレスファイバー量を制御し, その力学特性への影響を評価する手法を確立した。このシステムを利用し, 種々の条件下において, 力学刺激に対する細胞の力学応答を評価する実験をおこなった。その結果, 1)開発したセンサー・アクチュエータは, 局所的細胞骨格強度をコンプライアンス(やわらかさ)として評価する能力を有していることを確認した。2)細胞は, 単に入力した力学刺激を画一的な刺激情報として感知するのではなく, 力学刺激の種類(静的, 動的)を感知できる機構を備えていることがわかった。3)G-アクチン濃度が高く平衡状態に達していない細胞の場合, ストレスファイバー量が多い細胞の方が力学刺激に対する応答が大きくなる結果を得た。すなわち, ストレスファイバー量は細胞が示す力学応答に大きく関与していると考えられる。4)蛍光染色による細胞内部構造観察を行い, 力学刺激との関連を投影面積およびスレンダーネスレシオにより定量的に評価可能であることを確認した。
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