研究概要 |
本研究の目的は,生物の個体発生過程をモチーフとして,幾何学的に複雑な形態への安定かつ自発的な自己組み立てを実現する群ロボットの構築をダイナミカルアプローチの立場から議論することである.以下,本年度に得られた研究成果を具体的に示す: 1.前年度に設計・製作した実機ロボットの問題点の発掘を行い,いくつかの改良を施した.そして,20台程度の実機ロボットを用いて再度自己組み立て能力に関する検証を行った.その結果,安定したモジュール間通信が可能となり,自己組み立て能力の再現性が大きく向上した. 2.再安定形態を円盤状形状からより幾何学的に複雑な形状へとするための実現方策について検討した.その結果,凝集力に時空間的な異方性を持たせることが効果的であることが明らかとなった. 3.振動子の引き込みを通した位相勾配に従った自己組み立ての設計論は自律分散性が高く,今後のこの分野にとって有力な方法論を提供することが期待される.しかしながら一方で,提案した凝集力の異方性に基づく手法は,明示的に異方性を与えるため,再安定形態の状況依存的な創発的生成能力が低いことが明らかとなった. 4.再安定形態が状況依存的に創発するためには,力覚情報に基づく局所センサフィードバックの導入が不可欠であるとの認識に至った.そこで,これに関しての数理モデルの構築を行った.現段階ではまだトイモデルの域を出ていないが,骨のリモデリングと類似した創発的構造形成を工学的に実現できる糸口をつかんだと認識している. 5.生成と崩壊の動的平衡に基づくダイナミックセルフアセンブリに関する予備的考察も行った.
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