研究概要 |
昨年度までの科学研究費助成により,非線形レーザ顕微鏡によるナノバイオイメージングの研究開発を行い,レーザ顕微鏡の高コントラスト影像化について下記に挙げる成果を得ることができた.通常の共焦点顕微鏡システムではサブミクロン以下のサイズの高吸収体を検出するには蛍光体等のドーパントを添加し,発光領域を空間的に制限しなければならなかった.また,電子顕微鏡等を用いる場合は細胞をスライスし真空雰囲気中に置かなければならないなどの欠点があった.ところが,本提案システムでは同顕微システムにメモリ機能または光波混合干渉系をプラスすることで上記条件に制約されない新しいタイプの顕微システムを実現できた. 今年度はその実際に開発した光波混合型のレーザ顕微鏡を利用して,被測定生体細胞として池や川などに生息する緑藻細胞中に含まれる葉緑体細胞の高コントラスト影像化を試みた.ミクロンサイズの葉緑体細胞にはサブミクロンオーダーのチラコイドとストロマチラコイドと呼ばれる葉緑体クロロフィルが存在することが知られており,それを実際に水雰囲気中で蛍光体等のドーパント等無しに影像化できるかが鍵となる.その結果,実際に緑藻細胞のチラコイドとストロマチラコイドの袋状の外形およびクロロフィル分布等の内部構造を非線形感受率の非対称性分布から内部断層影像することに成功した.サブミクロンオーダーの葉緑体細胞をスライスすることなく水雰囲気中で生きたままの状態での観測を実現でき,得られた成果を現在投稿準備中である.今後は光波混合工学系にベクトリアル偏光干渉をより精度良く導入することで更なる高コントラスト化・高空間分解能化が可能となるものと期待できる.
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