触覚遠隔伝達のための要素技術として以下の実績を得た。前野は、ヒトの指腹部と同等のサイズの分布触感検出用柔軟皮膚型触覚センサを開発した。表面には指紋上の凹凸を設けると共に、皮下には複数のセンサを埋め込んだ。また、本センサにより触感の基本因子である凹凸感、硬軟感、摩擦感を検出できること、刺激の方向識別も可能であることを確認した。また、超音波振動子と力覚提示装置を用いた触感ディスプレイの基本デザインを行い、凹凸感、硬軟感、摩擦感を複合的にヒトに提示できることを確認した。 昆陽は、マスタ・スレーブ型の粗さ感伝達システムを対象として、ヒト模倣型触覚センサを利用して、対象物の波長をリアルタイムで推定する手法を提案し、通信遅れがある状況でもマスタ側で粗さ感を時間遅れなく呈示する手法を提案した。また、触感伝達のための基礎実験として、触運動と触刺激の間の時間遅れの影響を心理物理実験によって評価した。これにより、触刺激に遅れていることに気づく検知限の前に、遅れてはいないが触感が変化することに気づく検知限が存在することを確認した。さらにヒト指腹部有限要素モデルにより、剛体平板との接触時の摩擦係数と触覚受容器活動との関係を調べ、振動刺激による摩擦感の呈示法を提案した。超音波振動を利用した触角ディスプレイのために、パラレル配置した圧電バイモルフの共振を利用した小型の超音波振動子の設計も行った。以上のように、初年度は計画通り、触覚遠隔伝達実現のための基本要素技術に関する成果を得た。
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