研究概要 |
平成21年度は,前年度までに開発した要素技術を組み合わせ,昆虫を規範とした壁面歩行ロボット,水面移動ロボットの製作を行った.壁面歩行ロボットは,MEMS技術を利用して,シリコーンゴムの一種であるPDMS,及びガラスを用いた付着パッドを製作し,付着性能を評価した.その結果,PDMSパッドは壁面に平行な摩擦力が大きく,ガラスパッドは,液体を供給することにより壁面に垂直な付着力が大きくなることが示された.さらに,これらの性質を併せ持つ複合パッドを開発し,個々のパッドに比べて付着性能が向上することを確認した.次にこれらのパッドを用い,各パッドの特性を生かした壁面歩行ロボットを設計,製作した.歩行機構として,一つのモータにより昆虫の代表的な歩容である「交互三脚歩行」が可能な機構を採用した.製作したロボットを用いて歩行実験を行い,垂直な壁面,および天井面での歩行に成功した. 水面移動ロボットについては,水面移動と陸上歩行の両方が可能なロボット,および水面上での跳躍が可能なロボットの2種類の開発を行った.撥水性の脚の形状をさまざまに変化させて水面上での支持力,引き離し力,推進力を測定し,形状の最適化を行った.水陸両用のロボットは,可動部にジンバル機構を採用し,アクチュエータに形状記憶合金を用いて,各脚が楕円軌道を描くように制御した.MEMS技術を利用して真鍮の薄板にロボット本体を展開した形状を加工し,薄板を折り曲げることによって3次元機構の一体成形を行った.製作したロボットの動作実験を行い,水面移動と陸上歩行が行えることを確認した.また,跳躍ロボットについては,ゴムの動力を用いて水面から完全に離れて跳躍を行うことに成功した.
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