研究概要 |
本研究の目的は,空気圧アクチュエータを用いた,より高機能で軽量な筋電義手とその制御方法の開発である.この目的を達成するために,まずロボットハンドの駆動源であるアクチュエータに着目した.人が使用することを前提としているため,安全性を考慮して駆動源としてマッキベンタイプの人工筋を用いることとし,独自に開発した低圧駆動型空気圧アクチュエータを使用した.知的クラスター事業で開発した低圧駆動型空気圧アクチュエータを22本用いた5指ハンドの手首関節に橈屈・尺屈と内転・外転の2自由度を付加した,5指筋電義手のプロトタイプを試作した.制御精度の向上を図るため,空気圧アクチュエータが有するヒステリシスや摩擦などの非線形の影響を考慮した制御モデルを構築した.また,構築した制御モデルを1リンクアーム指モデルに適用し,実験によりその有効性を検証した. 手首のワイヤ駆動による非線形性と物体把持による負荷変動に対してロバストな制御系として,目標値に対する手首の偏差角度と偏差各速度を入力とするファジィ制御を提案し,実験によってその有効性を実証した.また,筋電信号による角速度生成法を提案し,円錐モデルによる誤動作識別法と併用することで,より誤動作の少ない筋電義手駆動方法を開発し,実験によりその有効性を確認した.これらの結果を国際学会(IECON2009:査読付き,EMBC2009:査読付き)で公表した. これらの成果は,セル生産に用いられる産業用ロボットハンドに展開され,「国際食品工業展2009,ロボットフードパーク」にて「すしをつまみ上げるロボットハンド」としてデモ展示を行い,多くのメディアに取り上げられた. 以上により,手首2自由度と母指掌側内転機能を有する空気圧駆動5指筋電義手を製作するにあたり,基本的な設計手法が確立された.
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