研究概要 |
大型超伝導コイルに用いられるケーブル・イン・コンジット(CIC)超伝導導体では,変動磁場に対して,撚りピッチの2乗に比例する規則的な損失の他に,数秒から100秒程度の時定数で,平均数10秒程度の長時定数を持つ不規則な電流ループによる損失が存在していることが確かめられた。これらのループの面積はインダクタンスに比例し,インダクタンスは時定数に比例し,磁界との鎖交面積は発熱に関係するので,不規則に発生する長時定数の結合損失を調査するには,素線間の接触長,ループの面積,磁界との鎖交面積などを詳細に観測できる素線軌跡3次元(3D)計測が重要な研究課題の一つである。 素線数3^4=81本の撚り線加工後,塩化ビニールパイプに収納し,長手方向に1mの長さでエポキシ含浸する。素線の軌跡を調べるため,導体長手(z軸)方向に約11mm間隔で切断し,z座標の小さい方をlow,大きい方をupと定義する。4端子法を用いてlow側とup側の素線断面間の抵抗を測定することによって,素線の位置座標(xlow,ylow),(xup,yup)を決定する。このようにして求められた素線の位置座標を導体長手方向にスプライン補間することによって,詳細な3次元の素線軌跡を得るのに成功した。その結果,典型的な素線変位写真と素線間接触長の分布より,トリプレットの正三角形は初期状態を保存しているものと変形しているものがあり,測定範囲内の全平均値で小変位が26.4%,大変位が0.8%であることが初めてわかった。また,接触長の分布を各サブ・ケーブルで調べると,2次ケーブル内の平均接触長は18mmで,次数が高くなると短くなることが分かった。 また,素線配置の計算力学モデルを構築するために,CIC導体内の486本の各素線の初期分布として,各次数の撚線が占める面積が同じとして解析した本来配置されるべき素線の中心位置分布を求めるモデルを完成した。
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