研究概要 |
多数本の素線で構成された不規則結合損失データを有するCIC導体の導体内の素線位置を, 開発した3次元素線位置計測システムを用いて, 試作した81本の素線数を有する円形CIC導体を約1cmごとに測定し, さらに, 核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)に用いられたOVコイル用486本の素線数を有するCIC導体の素線配置を同様に1cm間隔で測定し, 各測定面から3次元的に補完してCIC導体内の素線位置を可視化し, それを基に, 2種類の導体の不規則な交流損失の比較を行った。不規則な交流損失は, 素線間距離のループ内での積分値であるループの面積に対する投影面績に比例するので, ループ毎に計算される結合損失の全体の積分値を比較する。投影鎖交面積はX, Yの2方向で求めており, 幅広面に垂直な方向をXと定義して, それぞれの方向に関する結合損失を求めた。矩形導体の結合損失は, 81素線CIC導体の結合損失結果と比較すると, 幅広面に垂直な方向の変動磁界に対して, 損失が大きくなる可能性が始めて示唆された。これは, 幅広面における素線軌跡が, 矩形に圧縮される際に不規則な変化を受けやすいためと考えられる。 測定した素線の3次元位置情報から, 計算力学モデルによる素線配置分布の統計学的推定のために, 素線段階, 1次, 2次などの各撚線次数段階での素線の不規則変位分布に関する期待値や標準偏差などの統計的標本データを収集した。さらに, 測定した情報から測定外の素線配置を推定する方法を調査し, カルマンフィルターを用いた推測モデルによる推定が適切であることが分かった。
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