研究概要 |
多数本の素線で構成されたケーブル・イン・コンジット(CIC)導体内の3次元素線位置測定装置を開発したので,それを用いて大型の481本の素線を有するCIC導体の3次元測定を行った。測定した素線の3次元位置情報から,素線段階,1次,2次などの各撚線次数段階での素線の不規則変位分布が明確となり,それらに関する期待値や標準偏差などの統計的な基本データを収集した。その結果,大きな変形を受けた素線は,その位置から遠くなると,元の予期された位置に戻ることも明確になった。また,大型CIC導体内の各素線の初期分布として,各次数の撚線が占める面積が同じとして断面内に本来配置されるべき素線の中心位置分布を計算するアルゴリズムを開発して任意の本数や撚り段数でも素線位置を推定できる数値解析プログラムを確立した。 これらのデータから,不規則な交流損失を誘起する原因となる素線間ループを流れる結合電擁を推定するために,素線間の接触点数接触長さ,接触点間で作られるループの数や面積を算定し,接触点数やループ数が極めて多いので,導体長手方向を細分化した分布定数回路で近似して電気的諸量を解析した。また,各素線には大きな電磁力が作用し,接触点で隣の素線による曲げ歪を受けることになるので,素線に曲げ歪が作用した時の臨界電流の劣化現象を調べた。素線内の多数の超伝導フィラメントの中で,曲げ歪の大きいフィラメントは臨界電流値が低くなり,磁束流状態になると,抵抗が発生し,電流が他のフィラメントに移動することが明らかとなった。同様に,この考えを素線に適用して,各素線に発生する不規則な結合電流が臨界電流を越えて磁束流状態になると素線内に抵抗が発生して,電流が隣の素線に移動する転流現象を明確に把握できた。また,コイル電流の立ち上げ速度を速くすると,この転流現象が早い時点で起きることも確かめられ,実験結果と良く一致していることが分かった。
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