研究概要 |
リチウムイオン二次電池を使用したハイブリッド自動車や小型分散電源用の蓄電装置の制御系を開発するためには,電池の過渡応答を考慮に入れた動作特性シミュレータが必要となる,しかし,リチウムイオン二次電池の過渡応答を考慮に入れた動作特性シミュレータについては,まだ開発されていないのが現状である.さらに,実用的なシミュレータであるためには劣化の影響も考慮されていることが必須であるが,そのようなシミュレータは構築の試みすらこれまでのところ皆無である.これらのことを考慮して,本研究では,リチウムイオン二次電池の劣化を考慮した過渡動作特性シミュレータを構築することを目的とし.平成21年度までに,以下の研究を行ってきた.(1)劣化していない電池を対象として,種々の温度と充電状態のもとで交流インピーダンス特性を測定し,電池の過渡動作特性を模擬する等価回路の構成を決定した.(2)測定した交流インピーダンス特性を等価回路にフィッティングすることにより,等価回路の回路定数を決定し,劣化していない電池の過渡動作特性シミュレータを完成させた.(3)電池の加速劣化試験を行い,劣化にともなう電池の交流インピーダンス特性の変化を詳細に測定し,電池の劣化にともなう等価回路の変化は電池の使用法に依存せずほぼ同じとなることを確認するとともに,電池の簡便な劣化度判定試験手法を提案した.これらの経緯を踏まえて,最終年度である平成22年度には,劣化度判定試験の結果から電池の劣化時の等価回路を推定する手法を確立し,劣化も考慮したリチウムイオン二次電池の過渡動作特性シミュレータを完成させた.さらに,完成させたシミュレータによる計算結果をそれと対応する実験結果と比較することにより,本シミュレータは劣化電池に対しても十分な精度を有することを確認した.本研究は平成22年度で終了であるが,以上により,所期の目標をすべて達成することができた.
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