研究概要 |
近年の電力流通コスト低減の要求から,電力機器の小型化が進められており,絶縁系に加わる設計ストレスは材料の本質的な破壊ストレスに近づいている。その要求に応えるため,素材の性質の補強またはその改質を行う目的で添加剤、充填剤が高分子絶縁材料に配合される。最近ではナノテクノロジーが注目を集めており,国内外における高分子絶縁材料の分野でも粒径が数十nmであるナノ充填剤を混入させた高分子絶縁材料の研究が開始されている。本研究では,絶縁材料への適用を目指したMgOナノコンポジット絶縁材料の様々な絶縁特性を同一の研究機関において多方面から解明することを目的とした。 その結果,少量のナノフィラー添加により直流絶縁破壊の強さが上昇すること,伝導電流もそれと同様な傾向を示すこと,高電界下においてはナノフィラー添加試料の方が無添加試料よりも空間電荷が形成されにくいこと,ナノフィラー添加試料は耐水トリー特性や耐電気トリーなどが優れ,直流のみならず交流においても無添加試料に比べ優位な電気特性を示すことなどがわかった。また,ナノコンポジットの性能の決め手となる分散状態を伝導電流測定から推測する方法などナノフィラーの分散性を含めた電気特性の把握を行った。さらには,ランプ電圧下における絶縁破壊までの空間電荷測定システムを開発し,低電界においてはナノコンポジットは空間電荷が形成されるが,印加電界の上昇とともにその蓄積した空間電荷が減少することなどを明らかにした。
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