| 研究概要 |
永久磁石の磁気特性は磁石が経験した着磁磁界に依存するため,多極着磁される永久磁石は場所ごとに異なる減磁曲線を有している。本年度前半の研究においては,磁気特性の着磁磁界依存性を考慮して,多極着磁された磁石の磁化分布を有限要素法により解析する手法を開発した。開発した手法では,解析対象とする永久磁石について,着磁磁界と減磁曲線の関係がデータベースとして用意される。次に,このデータベースを利用して,小要素に分割された永久磁石の要素ごとに曝された着磁磁界に応じた減磁曲線が設定され,磁石内の磁化分布が計算される。年度後半においては,開発技術をNd-Fe-Bボンド磁石を用いた電動機に適用し,着磁磁界分布,着磁時の磁化分布,着磁電流切断後の局所反磁界,磁化分布を解析した。次に,磁石が高温に曝された場合を想定して,高温暴露温度下での永久磁石内での磁化分布を有限要素法で解析し,従来の初期減磁予測法と組み合わせることにより,永久磁石の不均一減磁を予測することに成功した。
得られた減磁率は着磁状態に大きく依存し,経験した着磁磁界が小さい領域で大きな減磁率が予測された。これは,十分に着磁されていない部分は保磁力が小さく,高温に曝された際に局所反磁界のために磁化反転が生じるためと考えられる。多極着磁された電動機内での減磁は不均一に生じるため,減磁の前後でトルク特性の変化が生じる可能性があり,減磁を考慮したモータ設計が必要であることが明らかになった。
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