近年、ハードディスクドライブの高密度化・小型化への要求が高まっているなど磁性材料を用いた分野が急速に発展している。磁性材料の使用が増加するとともに磁性材料の評価(磁区の観測)も様々な方法が考案されている。評価方法の一つに走査型ホールプローブ顕微鏡(SHPM)がある。SHPMは磁性材料の自発磁界を定量的に測定することが可能であり、空間分解能の大きさはプローブであるホールプローブの微細化により50nm程度まで高めることができる。また、低温から室温までの幅広い温度範囲での測定や、外部磁界印加時の測定が可能であり、様々な条件下における磁区の観測を行うには有力な手法である。ただ、既存のGaAs系材料のホール素子は約120℃以上での動作が不安定であるため、120℃以上のSHPM観察が困難である。本研究では、120度以上における強磁性体の局所的な磁界分布を観察することを目標とし、HT-SHPM用ホールプローブの作製及び高温状態における強磁性体の磁界分布の観察を目的とする。研究実施計画ではAlGaN/GaN構造のAl組成の理論的検討を行い、AlGaN/GaNエピウエハの作製及びAlGaN/GaNホール素子の電極形成と評価し、電極材料(Ti/Mo/Ti/AU多層薄膜)と加熱条件の最適化と評価を行う。実際には電気特性の測定をvan der Pauw法を用いホール係数-温度(R_H-T)特性、移動度-温度(μ-T)特性を測定した。さらにAlGaN/GaNヘテロ構造を用い、感磁部の大きさは2μm×2μm、ホール素子を作製し、素子のホール電圧-磁界(V_H-B)特性、ホール係数-温度(RH-T)特性を測定した。主な結果は(a)構造の異なるAlGaN/GaN材料の高温特性評価:室温から400℃におけるR_H-T特性及びμ-T特性からHT-SHPM材料にはホール係数が温度依存性と移動度変化が少なかった。従ってSiドープかつAlの組成比が小さい構造がHT-SHPMに適している材料であることが分かった。
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