プレーナ型強磁性トンネル接合を作製し、そのスピン移行効果に伴う磁気特性を明らかにすることを研究目的とした。研究期間内に (1)プレーナ型強磁性トンネル接合の作製方法の確立 (2)(1)に関連して原子間力顕微鏡(AFM)を用いた新しいナノリソグラフィ技術の確立とナノ磁性構造における磁気特性の制御方法の確立 (3)プレーナ型強磁性トンネル接合におけるスピン移行効果の検証と物理的考察を実施することにより、3端子デバイスの適用を含めたプレーナ型強磁性トンネル接合の利点を明らかにすることを目指す。 平成19年度は上記(1)の研究に関して、以下のような研究成果を得た。 電子線蒸着法により成膜したNiFe薄膜を、フォトリソグラフィとドライエッチングを組み合わせ、細線状に加工した試料を作製した。基板にはSiO2/Siを用いて、NiFeの膜厚は2、4、8、10、20nmとした。原子間力顕微鏡(AFM)を用いた陽極酸化法により、NiFe細線を横切るようにNiFe酸化物ナノワイヤを作製し、NiFeの孤立部を形成することに成功した。この孤立部の磁区構造を磁気力顕微鏡(MFM)で観察し、その通電電流による磁化反転を観測するための試料構造を作製できる状況に到達した。また、NiFe酸化物ワイヤがNiFe薄膜の底面まで到達した際には微小プレーナ型2重強磁性トンネル接合が作製できるが、電流電圧特性の測定から、ダイオード特性を観測するに至った。 今年度のこれら成果は次年度にスピン移行効果の実験を実施する上で、十分なものであり、所期の計画に基づいた研究が遂行されると期待される。
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