研究概要 |
本研究では、SiO_2膜上に形成したナノワイヤー状のアモルファスSi膜を3次元配向制御熱処理により単結晶化し,これを用いて高性能Si薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目指す。初めに,SiO_2膜上に堆積したアモルファスSi膜を100nm幅のナノワイヤー状に加工し,1次元配向制御熱処理により結晶化させた。ウェハ全面観察では表面自由エネルギーが最も低い(111)面が支配的な多結晶Si膜となっているが,TEM観察により断面には結晶粒界が全く観察されず,このSiナノワイヤーは従来観察されていない数μm長の長い単結晶粒が連結して構成されていることが分かった。さらに,SiO_2膜の側壁を利用して形成した30nm幅のSiナノワイヤーを用いて2次元制御熱処理を行うと,Siナノワイヤー断面には結晶欠陥がほとんど存在しないことが分かった。Siナノワイヤーに沿った電気伝導を調べるために,バルクSiウェハの表面をナノメータオーダのグレーティングに加工し,CMOSトランジスタを試作した。nMOS, pMOSトランジスタの相互コンダクタンスは,従来のプレーナ型に比べそれぞれ22%,73%増加することを確認した。性能の向上は,ナノワイヤー構造の3次元的キャリア伝導と内蔵応力によるキャリア移動度の増加に起因するものであることが分かった。次年度は,3次元結晶配向制御した単結晶化Siナノワーヤを用いることにより,絶縁膜上の任意の位置に形成したナノワイヤーの高結晶性ばかりでなくキャリア伝導の優位性を活用し,これまでアモルファスあるいは多結晶膜しか使用できなかったSiTFTの高駆動力・高信頼化および特性ばらつき低減を実証する。
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