研究概要 |
平成19年度は,高速有機トランジスタの基礎特性とアクティブアンテナの設計と作製技術に焦点を絞り研究を進めた。高速有機トランジスタの基礎特性では,電荷移動錯体材料として,有機Mott絶縁体である(BEDT-TTF)(TCNQ)に着目し,錯体薄膜作製に適する塗布技術を確立し,有機層電荷移動錯体薄膜のX線回折および高分解能走査プローブ顕微鏡による結晶薄膜構造の評価を行った。作製した電荷移動錯体薄膜トランジスタの電気物性評価を行った結果,両極性電界効果トランジスタ特性を示し,280-330Kの温度領域で金属-絶縁体転移に起因すると考えられる特異な電気特性を示すことが判明した。また,既存の導電性AFM探針を用いたナノスケール電位分布評価装置によってチャネル領域の電位分布と薄膜構造の均一性を評価し,トランジスタ特性と薄膜結晶構造には密接な相関があることが示された。 アンテナの設計と作製技術では,有機トランジスタ特性から送受信特性に必要なアクティブアンテナの基本設計を進めた。まず,アクティブアンテナとして印刷可能な線幅と電極材料の抵抗から作製可能なサイズのループアンテナを設計し,電磁界解析法としてよく用いられる有限差分時間領域法をベースとした専用高速数値計算機を活用し,数値シミュレーションによる素子の基本パラメーターの絞り込みを行った。シミュレーションによるアクティブアンテナの設計に基づき,有機スイッチングトランジスタを組み込んだ情報タグ用アクティブアンテナ部分の作製技術を検討し,銀を主成分とする低抵抗金属ペーストと溶媒溶解性を有する有機導電性材料からなる材料を検討した。また,電極材料の接触抵抗をFET特性のチャネル長依存性から評価した。今後,アンテナ設計と有機トランジスタ基礎特性からアクティフアンテナを作製し,特性評価を行う。
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