研究概要 |
通常の光学系,伝搬波を用いた画像化システムでは,画像分解能は用いる波の波長程度に制限されるが,走査型近接場顕微鏡技術を利用するとこの限界以下の分解能,すなわち波長よりも十分小さい分解能で物体を観察,画像化することが可能である。本研究では,電波の領域であるミリ波帯において,従来達成されている空間分解能を格段に改善し得る超高分解能プローブを開発して画像取得を実施すること,すなわち,超高分解能ミリ波マイクロスコピー(超高分解能ミリ波帯走査型近接場顕微鏡技術)の開発を研究の第一の目的としている。更に,開発した技術を生体組織等の観察に応用し,ミリ波利用の新たな可能性を探索することを第二の目的としている。本年度は昨年度に引き続き,高分解能化を実現するための基礎検討を実施した。具体的な研究事項及び結果,得られた成果を以下に示す。 研究代表者が開発を実施してきた金属導波管を用いたスリット型プローブを対象として,金属導波管プローブの先端部分を半導体プロセス技術により製作して微小なスリット状開口を形成する方法を検討した。現在,高感度かつ高分解能での計測を実現するためのプローブの設計を完了し,先端部分を製作するための半導体プロセスに関する検討をほぼ終了した段階である。 本研究で高分解能化を実現するための第二の方法として提案する,ナイフブレードを用いた高分解能ミリ波マイクロスコピーに関する検討を実施した。ナイフブレードをプローブとして用いることにより,通常の散乱型計測で用いられている金属針の場合と比較して,はるかに高感度な画像化が可能なことを実験的に確認した。更なる高分解能化を目指して,半導体プロセスによるナイフブレードの製作も試みた。その結果,機械工作で製作されたナイフブレードと比較して,高分解能化に適した先鋭かつ直線性の良好なナイフブレードを作成するための製作プロセスの開発にも成功した。
|