研究概要 |
本研究は,我々が開発したAg-As-SeやAs-Se系カルコゲナイドカラスの高い非線形性とガラス固有の優れた加工性を利用して,全光学形の超高速光スイッチと光双安定デバイスの実現を目指すものである。 19年度は,方向性結合器による非線形スイッチの実現を主に目指した。尚,方向性結合器は2素の単一光導波路が数μmの間隔で接近したものであり,入射光強度の強弱によって2つの出力ポートからの光出力を空間的に切り替えるものである。光リソグラフィと光ドーピングによりデバイスを作製しているが,ウェットエッチングを数回行う関係で,膜が剥離してしまうなどの問題点が発生した。しかし,現在では,高い歩留まりでデバイスが作製できるようになっている。試作したデバイスに光を導波して実験を行っているが,非線形動作を実験的に確認するまでには至っていない。計算による設計だけでは不十分であることが分かったので,色々な寸法のデバイスを試作し,実験的に最適なパラメータを見い出しているところである。また非線形動作確認の指針けを得るために,デバイスを構成する光導波路の線形吸収,非線形吸収,入射パルス幅等がデバイスの特性に与える影響を数値的に明らかにした。これらの研究と平行して,Ag-As-SeとCu-As-Seガラスの光酸化と光黒化に関する研究を行い,Ag(Cu)の添加が有効であることを見い出した。本研究では,全反射を利用した光導波路から構成される光デバイスの開発を目指しているが,デバイスの小型化の観点から,フォトニック結晶化の検討も行い,幾つか成果を上げた。 本研究で購入した主な装置は,縦単一モードYAGレーザであるが,液体(フロリナート)の誘導ブリルアン散乱によるパルス圧縮を行い,12.5nsから1.5nsの範囲でパルス幅を変えることができた。現在,パルス圧縮されたレーザ光を用いて、As_2Se_3ガラスとSi結晶の非線形光学特性(非線形屈折率と吸収係数)と誘導ブリルアン散乱のパルス幅依存性の実験を行っており,成果を逐次発表していく予定である。又,試作した非線形デバイスの特性評価に利用していく。
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