研究課題
携帯電話に代表される移動通信システムのブロードバンド化が進められているが、このようなブロードバンドシステムでは電話が中心の現在のシステムに比べて、十倍以上の送信電力量を消費することが見込まれる。一方、無線送信装置の電力効率(=送信電力/直流消費電力)の改善は大きな壁に突き当たっている。本研究ではこの限界を打ち破るため、増幅器の最大効率領域(飽和領域)で常時動作させる新たな線形送信方法を提案した。提案法では、まず送信すべき変調波の複素包絡線から振幅成分と位相成分を分離し、振幅成分(包絡線)をデルターシグマ(Δ-Σ)変調器によってパルス幅変調(PWM)信号に変換し、位相成分で変調した定包絡線のPM変調波との乗算を行う。次に乗算結果を飽和増幅器で増幅し、バンドパスフィルタで必要な変調波成分を取り出す。本方式での研究課題は、Δ-Σ変調器で発生する量子化雑音の変調波への影響を明らかにし、移動通信システムで許容される帯域外および対域内でのSN比が達成できるように回路と信号処理のパラメータを決定することである。このため本年度は以下の検討を進めた。(1)Δ-Σ変調器で発生するClippingひずみと量子化雑音の両者がOFDM変調波に与える影響の解析・前年度に解析したEPWM送信機の量子化雑音に加えて、Δ-Σ変調器で発生するClippingひずみの影響を解析し、両者が同時に存在する場合のOFDM変調波に対する雑音スペクトルを理論解析し、シミュレーション結果と比較した。(2)量子化雑音のさらなる低減方法の検討・OFDM信号に対するΔ-Σ変調器のクリッピング耐性を高めて量子化雑音S/Nを向上する方法として、EPWM送信機の入力側でClipping & Filtering処理を行う方法を提案した。この方法の効果を、クリッピング閾値、量子化ステップ幅をパラメータとして解析し、隣接チャネル電力で1~2dB、次隣接チャネル電力で1~3dBの改善を得た。・さらに、Δ-Σ変調器で発生した量子化雑音の一部帯域を取り出し、これを打消し信号として利用することで、信号帯域から次隣接チャネル帯域で量子化雑音S/Nを向上する方法を提案し、解析を始めた。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
IEICE Transaction on Fundamentals on Electronics, Communications and Computer Sciences (採録決定, 印刷中)
http://www.awcc.uec.ac.jp/