研究概要 |
1.CEO問題の研究 多数の分散地点でセンサーから観測される雑音で汚れた情報信号を各地点で独立に符号化して送り,そこで,情報信号に関する推定を行うシステムを考える.これは,分散並列型センサネットワークの理論的モデルとの一つである.この通信ネットワークにおいて,通信の効率と推定信号の品質とのトレードオフ関係を明らかにする問題は最高経営責任者(Chief Executive Officer, CEO)問題とよばれている.CEO問題は,幾つかの特別な場合には解けているが,基本的には,未解決である.本研究では,情報源がおよび,観測雑音がガウス型でガウスCEO問題の最も一般的な場合を考察し,重要な部分的結果を得た. 2.ガウス情報源に対する多端子伝送率・ひずみ問題 2つの相関を持つガウス情報源に対する多端子伝送率・ひずみ問題について,Wagnerらは,2008年の発表論文で,Berger and Tungのレート和の部分の最適性を証明したが,彼らの証明は,情報源の数が2であることに強く依存した証明であった.そのため,情報源の数が3つ以上の場合については,極めて特別な場合にしか結果がなかった.本研究では,情報源の数が3つ以上の場合の伝送率・ひずみ領域の決定問題に取り組み,重要な部分的解決を与えた.まず,多端子伝送率・ひずみ領域の決定問題が,ガウスCEO問題に帰着されることを示した.この事実と,発生信号がガウスCEO問題に対して研究代表者者が得た結果より,多端子伝送率・ひずみ領域の内界と外界を導いた.得られた内界と外界のレート和の部分は,情報源が2つの場合に一致することが計算により示せる.これは,情報源が2つの場合のレート和の最適性について,Wagnerらの証明とは異なる証明を与えたことを意味する.
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