研究概要 |
本研究では, 高齢者福祉分野のニーズを踏まえ, 高齢者のリスクを検出・評価するシステムの構築を目的として, 要素技術の研究と, 住居や介護施設など屋内を対象としたプロトタイプシステムの研究開発を行なった. 今年度は, 昨年度から引き継いで, (1)高齢者のリスク行動パターンモデル開発, (2)屋内における位置同定手法/移動予測手法の検討, (3)高齢者リスクマイニング手法の開発を行なうと共に, 日常行動の履歴からリスク要因と推定される状況を抽出する, 高齢者リスク検出・評価システムを試作した. (1)虚弱高齢者の体力テストは, 認知機能の低下や抑うつにより, 実施が容易ではない.そこで歩行状態のモニタリングから歩行機能や身のこなしに関連する事象を抽出し, 転倒リスクの評価を行なうこととした. 歩行機能が保たれていても, 長時間の休息や起床後には骨格筋の短縮による筋機能の低下が起こるため, 歩行機能の一時的な低下が生じる可能性がある. したがって同一個人においても転倒リスクが時間的に変化する可能性がある.そこで介護度2, 3レベルで自立歩行を行っている虚弱高齢者の日常生活の行動を, 移動経路推定機能を有する携帯型身体活動センサーでモニタリングした. その結果, 建物内の距離が確定している経路の移動時間を計測することにより歩行速度の推定が可能であること, また時間帯によって歩行率や歩行速度分布に大きく変化することが明らかになった. (2)自宅での高齢者介護サービスについての検討を行い, このためのシステム構成等をまとめて論文発表した. 高齢者のリスク状態分類の学習を効率的に行うためのサポートベクトルマシンの研究, 観察時系列から特徴的なパターンを発見する系列マイニング, 学習プロセスを効率化するための半教師付き学習法, 日常行動の観測時系列からのトレンド変化の検出などについて方式検討を行い, 論文発表した.
|