生体内の毛細血管をも通過できる大きさ数ミクロン程度の微小力プセルに薬液を封入し、これを血管中に導入して患部にまで運び、カプセル内部の薬液を患部に有効に導入しようとするドラッグ・デリバリ・システム(薬液送達球術:DDS)は、高い薬液導入効率が期待できるために夢の治療法として注目を集めている。本研究では、DDSを構築する上で求められる患部へのターゲッティングと薬液導入効率の改善を目的として、超音波中での気泡の非線形振動を積極的に利用した気泡操作法(非線形気泡マニピュレーション法)を開発する。本手法ではポンピング波と呼ぶ気泡に非線形振動を生じさせる比較的音圧の高い超音波を用いて気泡を操作する点に特徴がある。具体的には、(1)ポンピング波の周波数に対して整数倍の周波数を持つコントロール波と呼ぶ超音波を用いた気泡の非線形トラッピング技術、(2)ポンピング波により生ずる気泡振動により気泡周囲に生じる非線形2次超音波を用いたターゲット壁面への非線形自己トラッピング法の2つである。前者は、局在化した領域に高密度で気泡を捕捉できる特徴があり例えば超音波内視鏡前面より放出した微小気泡を散らばらせることなく一定の領域内にとどめておく用途に向いている。一方後者の方法は、血管など閉じた空間内で気泡を壁面に積極的に付着させる上で有効になる手法である。実験は、超音波造影剤気泡である大きさ1ミクロン程度の気泡を用いたが、ともに所望の結果を得ることができた。これら研究では超音波照射時の気泡のダイナミクスを定量的に観測することが手法の改善の上で重要になるが、このための計測技術としてレ一ザ散乱法による気泡ダイナミクスの観測法について開発を行い、この方法を用いて手法の最適化を行った。さらに超音波の音圧や周波数など各種パラメータの最適化を行うために多数の気泡の運動を数値的に解析する数値解析法の開発も行った。
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