IT社会を支える超々大規模集積回路(ULSI)の構成素子である金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、あるいはディスプレイの駆動素子である薄膜トランジスタ(TFT)の高性能化を実現するため、ミリ秒時間の超急速熱処理(URTA)技術を用いて不純物活性化をおこなう技術が精力的に研究されている。本研究ではミリ秒時間分解能を有する非接触温度測定技術を開発し、不純物拡散制御やURTAプロセスのその場モニタリングへの適用を目的とする。本年度の研究成果として、 1.波長1.51μmのレーザー光を用いることでSiウエハの非接触温度測定が可能であることを世界で初めて実証した。 2.ミリ秒URTA中のSiウエハ表面温度を理想的には±1Kの精度で測定可能であることを明らかにし、本研究の非接触温度測定技術が極めて高精度であることが分かった。 3.URTAにより高ドープアモルファスSiを固相結晶化することによって、熱平衡固溶限を超えるキャリア密度を達成可能であり、高効率不純物活性化に有効であることを実証した。 4.前記不純物活性化技術をTFT作製工程へ適用したところ電界効果移動度67cm^2V^<-1>S^<-1>の優れた電気特性が得られ、半導体素子作製工程へ導入可能であることを実証した。 以上の成果により、本研究の非接触温度測定技術が将来の産業応用に対しても極めて高い可能性を有していることが明らかになった。2年目である来年度は測定温度精度の検証と、不純物活性化に重要な熱処理条件の明確化に取り組む。
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