本年度は、AsおよびBのクラスターイオンを注入したシリコンウエハ表面へ熱プラズマジェット照射ミリ秒熱処理をおこない、処理温度だけでなく、加熱・冷却の速度が不純物活性化に与える影響について詳細な実験的検討を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 ・Asは1000K以上で高効率活性化するのに対して、Bで同等の活性化率を得るためには1400K以上の熱処理温度が必要である ・B注入試料は1400Kまでの処理温度の上昇に伴って単調にシート抵抗が低下するのに対して、As注入試料は1000K以上の処理温度であってもシート抵抗値に大きなばらつきが生じる ・As注入試料のシート抵抗がばらつく理由を明らかにするために、1000K前後の処理温度で加熱冷却速度を0.3から1.0X10^5K/sに増加させる実験をおこなった。その結果、シート抵抗は3400Ωから250Ωへと大幅に低減可能であることが明らかになった。すなわち、処理温度だけでなく、高い急速加熱・冷却速度がAs活性化における重要なパラメータであることが明らかになった。 ・熱プラズマジェットを高密度化することによって、従来のミリ秒からマイクロ秒へと熱処理時間を短くすることによって、注入不純物(As)のクラスタリングの抑制と活性化率向上の可能性があることを実験的に明らかにした 以上、急速熱処理による不純物活性化において重要な熱処理条件に関して、実験的事実に基づく知見を得ることができた。
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