研究概要 |
1. 力覚の認知能力の評価: 熟練者の指先の空間的な位置と力の3次元の認知能力を実験評価した。その結果、指の前面方向は高い精度で力の大きさを認識するが側面方向では減少することを明らかにした。 2. 力覚・視覚提示法と5本指による評価実験: 手技の伝達では熟練者の指先の空間的な位置と力を同時に提示するが、情報量が多くなると操作者は混乱する。指先に目標カベクトルを事前に提示する方法の効果を実験的に検証した。その結果、少ない指では効果的であったが、5指では効果が減少した。 3. 柔軟物体の表面摩擦を考慮した有限要素法による触覚レンダリング: 従来、柔軟物体を対象とした摩擦力の触覚レンダリング法は、変形による影響で動摩擦を正しく提示できていなかった。動摩擦における物体表面上の接触点を正確に導出するアルゴリズムを開発し,肝臓モデルでの実装によりその有効性を検証した。 4. 人間の指の動特性を考慮した力覚提示制御: 手技の伝達では、インターフェイスに高い力応答特性が求められるが、系の動特性は人間の指とインターフェイスのダイナミックスの影響を受ける。今年度は、インターフェイスのダイナミックスを補償する動的制御法を提案し、その有効性を検証した。 5. 遠隔での手技伝達におけるシステム構成: 遠隔にいる操作者を対象とした手技伝達では、通信遅れを考慮する必要がある。従来はVRシミュレーションをサーバのみで行っていたが、サーバのみならず各クライアントでも行うシステムを提案し、実験により通信遅れによる不安定化を減少させることを検証した。 6. 指腹部に力覚を提示するデバイスの研究: 触診等では指先のみならず指腹部も力覚の提示が求められる。そこで、小型デバイスを試作し、指腹部の9箇所に力覚を提示できるようにした。物体操作の評価実験では、指先のみと比較して装着が煩わしくなるが、物体操作における臨場感が向上した。立体画像ディスプレイを用いた触診の手技伝達システムの構築:前年度に試作した立体画像ディスプレイと今年度に試作した指腹部に力覚を提示するデバイスを用いて生体の臓器や乳房の触診訓練システムを構築した。今後、生体の粘性、摩擦、ヤング率等のパラメータを調整する。
|