研究概要 |
本研究の目的は実用的な飛行船の自動航行制御システムを開発し,無人飛行船を用いた飛行実験により有効性を実証することである.平成19年度の具体的な研究業績は以下のとおりである。 1.テザー式小型飛行船による風の時系列データの取得と蓄積:外乱適応型自動制御システムの設計やシミュレーションなどに行う際,実際の風の時系列データが必要である。そこで,風速・風向計や3軸ジャイロなどのセンサーを搭載し,無線LANにより各種データを地上にリアルタイムで無線送信できるテザー式の小型飛行船システムを製作し,高度50〜80mでの風の時系列データを取得し,特に風の強い11月〜2月のうち5日間(のべ10時間)以上のデータの蓄積を行った。 2.外乱適応型アプローチ操船制御システムの設計と屋内飛行実験:風向が一定かつ既知の場合を考え,未知の風速をオンラインで推定し,風外乱を受けても,任意の希望の地点にすばやくかつスムーズに移動し静止できるコントローラの設計法を導出した。本研究のアイデアは,まず,モデルベース適応制御法を応用して風速をオンライン推定し,さらに研究代表者の従来から提案している座標変換法を応用することである。その結果,提案するコントローラは,風速推定器も含めたシステム全体の大域的安定性を保証し,かつ風外乱の中で,船首をすばやく風に向ける自然なアプローチ操船を達成できるという,これまでにない優れた利点を有する。数値シミュレーションと自律飛行制御実験装置を用いた屋内飛行実験により有効性を検証した。 3.屋外用実験機の設計検討:まず,高運動性能をもつ屋外用実験機の検討に必要なパラメータ(飛行船や翼の空力係数など)の同定を風洞実験により取得した。その結果に基づき,主翼と補助翼をつけた新しい飛行船システムを提案し,数値シミュレーションにより,翼の配置や位置の最適設計を行った。
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