研究概要 |
本研究における本年度の研究目的は,平方和(Sum of Squares:SOS)最適化を用いた新たな制御系設計法の開発,平方和最適化の数値解法において精度の高い解を得るための高精度化の検討,制御工学分野だけでなくそれ以外の分野への応用の可能性を探ることである.このような目的の下,本年度はつぎのような成果を得た. 1. 制御系設計法の開発:非線形システムにおけるロバスト制御問題において,リヤプノフ関数から導かれる二次形式不等式の変数変換と正定行列への帰着に伴う保守性を低減するため,保守性を残さないための新たな制約条件を加えた平方和最適化問題に帰着させるという設計法を開発した.また,有色雑音のある場合の連続時間システムのグレイボックス同定問題に対して,近似次数と真値への収束性への関係を数値的に調べると同時に,これまでの方法を拡張して平方和最適化に帰着するための新たな方法を与えた. 2. 高精度化の検討:平方和最適化問題の数値解を得るために帰着する半正定値計画問題についての解の性質を調べた.また,数値誤差が蓄積しやすく数値解の精度が低くなることが多い平方和最適化において,その数値解を求めるためのソフトウェアの実装に際し,多倍長精度の数値計算ソフトウェアを組み込むことが可能であり,それにより精度を上げることができることがわかった. 3. 他分野への応用:観測データを基にした幾何学的当てはめ問題が求めたい当てはめ変数に対する平方和最適化問題として定式化できることなどを示した.そして,その結果を用いることにより,画像処理などの他分野における各種の問題に対して平方和最適化が適用可能であることがわかった.
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