社会インフラが整備された今日、都市などの重要な社会基盤である地下トンネル構造物をより長期間使用するためには、これらの構造物を適切に維持管理しなければならない。しかし、都市開発などが構造物近傍で順次実施されているため、特に軟弱地盤においては知らずして既存の地下トンネルを損傷させている場合が多い。このような現状を踏まえ、地下構造物がいつどこでどのような損傷を受け今後どうなるかを予測することは、対策を講じるとともに維持管理を適切に実施する上で大切である。そこで、本研究では主に軟弱地盤に建設された既存の地下トンネル構造物の損傷の程度を評価するために、実験、解析、実地調査を行い、より実効性の有る新たな検査システムを見出すことを目的として実施した。研究の結果から次のことが明らかになった。(1)軟弱地盤のように柔らかい地盤の場合には、地表近傍で建設された新しい構造物の自重並びに基礎杭による変位拘束が原因となり、地下トンネルに対して大きな応力の発生を生じさせることがある。(2)地盤が沈下するような軟弱地盤では、支持杭などの影響も受けやすく問題となるが、地盤が固く、ヤング率の大きな場合には、ほとんどトンネルに影響を及ぼさない。その目安としてはヤング率では100N/mm^2以上か否かである。(3)このような原因による損傷を検知する上では、トンネル各点の経時的なレベル測量と地盤の物性値の把握が最も重要であり、逆解析による変形解析を行えば、精度のよい原因解明および将来の損傷予測も行うことができる。
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