研究概要 |
本研究においては、鉄筋コンクリート構造物中の鋼材腐食を対象とし、腐食センサの開発を行うとともに,腐食モニタリング結果のLCC評価システムへの融合を目的とした。また、コンクリート構造物の劣化環境の定量的評価方法を提案することも目的とした。具体的には以下の項目について検討した。 1)腐食環境への試験体の暴露試験による劣化状況の把握、2)腐食センサの性能把握および適用性の確認、3)LCCによる将来予測に基づいた構造物の維持管理方法の確立、4)劣化環境の定量的な評価を考慮した耐久性設計方法の提案、である。 平成19年度の実績を踏まえ、平成20年度においては以下の示す内容の研究を行い研究成果を得た。 1)鉄筋コンクリート中の鋼材の腐食センサの開発に関する研究:通常、ACインピーダンス法により分極抵抗を計測する際に用いられている「接触センサ」を用いて、直流の分極曲線を計測することを試みた。その結果、既存の接触センサを用いて分極曲線を計測することが可能であることがわかったので、直流分極曲線計測を現地構造物へ適用する可能性を把握することができた。さらには、分極曲線の結果を用いてコンクリート中鉄筋の不動の状態を判定する既存の方法を検証した。 2)腐食環境下への供試体の暴露試験:標準試験体による劣化促進試験を実施した。温度条件、乾湿繰返し条件を変化させた環境で促進試験を行い、劣化状況を試験した。試験期間が十分でなかったことから、十分なデータの取得までは至らず、試験は現在も継続している。一方、実環境に暴露している試験体の暴露期問6ヶ月および1年時の評価試験を実施した。この場合も、試験期間が十分でなかったために、十分なデータの取得までは至らず、暴露試験は現在も継続している。したがって、標準供試体の暴露による環境評価方法の原案の提案は今後の課題として残った。また、80年間供用された後に撤去された実構造物に対して、電気化学的計測を行ない、計測方法の有効性の検証を行った。 3)データ整理・解析および最終報告書の作成、対外的な報告:これまでに得られた試験結果を、卒業論文1編、修士論文1編に取りまとめた。また、土木学会において4編の口頭発表を行った。
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