研究概要 |
鉱山跡地など金属汚染現場は山間地域の斜面の場合が多い.このような汚染の対策には,侵食による汚染拡散の防止と荒廃した土壌生態系を修復可能な技術を適用する必要がある.本研究では,植物根圏の水分涵養・地盤安定機能と,リン資材による鉛不溶化・毒性低減効果を組合せた新しい鉛汚染土壌の修復技術(ファイトレメディエーション)の実用化を目指す. 本研究では,従来の土壌植物-大気系の水分収支システムの概念に,植物生理学の知見を導入した新しい鉛溶出挙動モデルの構築を行う.具体的には,従来の溶質移動モデルに不足している「植物根の生理特性が関与した分子レベルでの土壌中の鉛挙動メカニズム」を取り入れて,汚染土壌の鉛溶出挙動の予測と,リンと植物機能を併用した鉛汚染改良の的確な技術設計・評価につなげる. 平成19年度は,全体モデルの主要部分である含水率モデルの構築に重点的に取り組んだ.鉛汚染土壌に植物を生育させた大型カラム実験を実施し,得られた結果から,土壌pF値と含水率の関係と,植物体内の鉛吸収量を関連付けた.既往の現地実験で得られた植物生長因子(根,乾物重),土壌水分の経時変化のデータを関連付けて,根圏土壌中における植物体への溶質移動を考える上で必要になる植物体の根吸水量(T)を水収支法によって推定し,根重密度より深度別根吸水量を評価する方法を提案した.さらに,汚染土壌からの鉛溶出を経時的に計測する実験を行い,pHに対応する最大鉛濃度C_maxを求め,それを平衡状態の土壌間隙水濃度とし根の表面に向かう鉛の量を計算した.実際に計測された植物体鉛吸収量と比較すると,pH5のC_maxで計算したものが近い値を示した.
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