研究概要 |
東京湾等の閉鎖性内湾の多くに存在する浚渫窪地では無酸素水塊がしばしば発生し,青潮の発生原因となる等,水質上の重要問題である.本研究では簡易な硫化物測定法の確立に基づくモニタリングによって実態を明らかにするとともに数値予測手法を開発し,導水や埋め戻しといった対策について検討することを目的としている.平成21年度は補足モニタリングを行うと同時に数値モデルの改良に取り組み,これまでの静水圧モデルに基づく数値予測に加えて,非静水圧モデルによる数値予測システムを確立し,両者の相違点や適用方法について検討を加えた.その結果,静水圧モデルと非静水圧モデルの差異は台風時のような強い擾乱時には顕著となること,一方で,平常時には差異は小さいことを明らかにした.また,半年スケールの準長期計算においては一時的な差異が生じたとしても,長期的に見れば差異が拡大することは見られないことが示された.これらの結果は非静水圧モデルの重要性を示すと同時に,計算コストの小さい静水圧モデルでもかなりの程度,当該課題の検討に適用可能であることを示唆している.さらに平成21年度は土砂投入による浚渫窪地の埋め戻しの際のトレミー管を用いた底層土砂投入に関する低コストな施工方法について実験と数値計算による検討を加え,上層水と混合した状態で土砂を投入する際には,上層水の密度が底層水の密度より小さいことに起因する鉛直流の発生と濁り拡散に注意する必要があること,および当現象を支配する物理パラメータについて提案した.
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