研究概要 |
平成21年度までにセンサー計測の可能なpH,ORP,およびDOと底層1点の採水による硫化物濃度実測値を用いた,浚渫窪地および航路における硫化物濃度の鉛直プロファイル簡易推定手法を開発した.平成22年度は7月から10月にかけて浚渫窪地と平場における硫化物を含む水質モニタリングを継続した.この過程で本簡易推定法の適用範囲について明確にすると同時に,数値モデル開発のためのデータセットを構築した.平成22年度に実施した硫化物モニタリングデータセットに基づき,平成21年度までに開発してきた硫化物を含む数値モデルに改良を加え,1月から10月末までの数値計算によって浚渫窪地における硫化物動態を含む水質動態を再現可能な数値モデルを確立した.同時に,従来実施してきた静水圧モデルに基づく計算に加え,非静水圧モデルを用いた計算を実施することで,非静水圧モデルの意義や静水圧モデルの限界について検討し,計算コストや計算対象を総合的に勘案した上で,最適な数値シミュレーション技法を検討した.その結果,本研究の対象範囲では,計算結果に大きな差異は認められず,計算コストの面を勘案すると総合的には静水圧モデルの利用が適切であるとの結論を得た.ただし,この議論は格子解像度により影響を受けるため,さらに計算格子を細密にしていく場合は非静水圧モデルが必要となると考えられる.構築したモデルは年スケールでの浚渫窪地における消長をある程度再現することができるモデルであるため,浚渫窪地における導水等による環境改善対策において,長期的な最適運転法についても検討が可能な基盤を概ね整えることができた.
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