研究概要 |
東京湾をはじめとする大都市に隣接した内湾域の多くには,埋立に用いた土砂の採掘跡である浚渫窪地が点在している.浚渫窪地は著しい流れの滞留した海域となっており,初春から晩秋まで恒常的に大規模な無酸素水塊が存在する劣悪な環境にあり,しばしば青潮の発生源として認識されている.一方,近年の環境再生の機運の高まりを受けて,東京湾においては浚渫窪地が青潮の元凶であるとの前提にたって,これの埋め戻しに関する検討が始まるなど,浚渫窪地がにわかに脚光を浴びるようになった.しかしながら,浚渫窪地の青潮影響についての定量的評価は少なく,浚渫窪地埋め戻しによる青潮軽減効果には不明な点が多い,そこで本研究では浚渫窪地の青潮影響を定量的に解明することを目的の一つとし,まず,従来困難であった硫化物濃度の簡便なモニタリング方法の開発を行う.これを用いて浚渫窪地や航路の硫化物モニタリングを実施することで硫化物動態を把握する.次に定量的な検討を行うため,硫化物過程を含む水質モデルを開発し,モニタリング結果を再現することで,浚渫窪地の硫化物が青潮に与える影響について定量的な評価を行う.さらに,埋め戻しや浚渫窪地内の水質改善技術に関する検討を行い,浚渫窪地の適切なマネジメント方法について検討提案する.
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