研究概要 |
本研究は,河川の流れ・物質輸送・生物動態の相互作用を解明し,河川生態系が河川の水・物質循環に果たす役割を定量的に明らかにすることを目的とする.この最終目的を達するため,河川の水・物質循環を構成する主要な要素として,河川水・地下水の流れ,土砂輸送,有機物・栄養塩輸送,河畔植生,藻類,水生昆虫,魚類,土壌微生物を取り上げ,それらの要素間の相互の関係を定量化する. 本年度は,河川内での生物生産と物質輸送機構を結びつけるモデル開発に着手しており,具体には以下の3点に関する研究を実施した. (1) 河畔植生の効果を取り入れた水・土砂・有機物・栄養塩輸送機構の解明 (2) 河川水,地下水間での水・物質輸送機構の解明 河道内の水流,土砂の移動,河畔植生の消長を表現可能な準2次元数値モデルを開発し,木津川砂州河道における検証を行った.本数値モデルは,河道内地形(景観)の変遷を追跡しながら水・土砂の通過フラックスを評価するものであり,有機物・栄養塩輸送機構解明のために不可欠な基盤となるものである. (3) 藻類,水生昆虫,魚類を中心とした河川水内での生物生産と物質輸送機構の解明 河川感潮域を澪筋,ワンドなどの典型的な景観に分類したうえで,汽水性二枚貝が浮遊性藻類を濾過摂食する過程に着目し,これらの成長過程を数値的に追跡しながら各景観における水質浄化能評価を行った.また,中流域の河道内砂州において,チドリに代表される鳥類の営巣場などを対象とし,冠水頻度と植生の有無などの表層景観の差異に基づく生態的機能の評価手法を提示した.
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