研究概要 |
本研究は,河川の流れ・物質輸送・生物動態の相互作用を解明し,河川生態系が河川の水・物質循環に果たす役割を定量的に明らかにすることを目的とする.この最終目的を達するため,河川の水・物質循環を構成する主要な要素として,河川水・地下水の流れ,土砂輸送,有機物・栄養塩輸送,河畔植生,藻類,水生昆虫,魚類,土壌微生物を取り上げ,それらの要素間の相互の関係を記述する. 本年度は昨年度に引き続き,河川内での生物生産と物質輸送機構を結びつけるモデル開発を進めており,具体には以下の2点に関する研究を実施した. (1)河畔植生の効果を取り入れた水・土砂・有機物・栄養塩輸送機構の解明 植生の繁茂が進行している砂州や植生が繁茂していない砂州を含む約10km程度の砂河川区間に着目し,植生の繁茂状況と洪水時の冠水頻度から景観を区分するとともに,各ユニットにおける生物の生息適性,脱窒・硝化,有機物・栄養塩の捕捉といった生態的機能の評価を行った.また,特徴の異なる砂河川,礫河川のそれぞれにおいて,植生域変遷とそれに伴う砂州の発達,砂州内の土砂捕捉効果についてモデル化を行った. (3)藻類,水生昆虫,魚類を中心とした河川水内での生物生産と物質輸送機構の解明 ワンドを有する感潮河川において,水辺,澪筋といった特徴的な景観における現地観測結果に基づき,生息する底生動物の群集構造から生息場所を類型化し,各類型の物理特性を考察することで,生物生産に必要な物理条件を明らかにした.
|