研究概要 |
【土砂流出様式と生息場構造の対応関係】:和歌山県有田川と奈良県十津川の森林伐採履歴の異なる谷における河床地形と微生息場組成の調査によって、土石流発生から数十年スケールの生息場組成変化を明らかにし、渓流の生息場多様性を維持する土砂撹乱の発生頻度・空間分布を検討した.高原川源流域では土砂生産量や移動量の異なる谷について,ハイドロフォンによる土砂移動量のモニタリングを実施するとともに,生息場構造との対応関係を調査した.土砂供給量や河川地形と生息場類型や生物相との関係について群分析,相関分析,回帰分析,主成分分析を行い,コケマット被度や浮き石/はまり石率などの生息場特性を説明する土砂供給条件を明らかにした.栃木県鬼怒川上流において、河床の砂礫滞留や早瀬の発達に中礫が重要な役割を果たしていることを示し、中礫が減少し岩盤河床が拡大した結果生じる区間全体での底生動物群集の変化量を、河床地形と底生動物の対応を基に推定した. 【生息場形成・機能に関する実験的研究】:宇治川,木津川,布目川,真名川の貯水ダム下流において,プランクトンをトレーサーとした流下粒状有機物の捕捉効率測定法を確立し,砂州地形の発達が捕捉効率を高めることを示した.砂礫堆の有機物トラップ機能を検証するために,様々な形状の砂州地形を形成した実験水路にマツ花粉を流下させる実験を行い,砂州の上流側や側面で浮遊有機物の捕捉機能が高い事実を見出した. 【生息場予測モデルの開発】:河床材料の空隙が生態系評価に重要であることに着目し,粒度分布の分類,空隙率と粒度分布の関係,粒度分布の変化解析できる河床変動モデルを開発した.さらに,階般状河床のステップ波長を洪水履歴に応じて重ね合わせ,河幅をレジーム則で予測し,構成材料や波高を各流量に対する移動限界粒径から算定する方法でユニット形状と生息場配置をシミュレーションするモデルを開発した。
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