研究概要 |
かび臭対策として,粉末活性炭により浄水処理を行っている浄水場では,長期化した場合,粉末活性炭の使用量増大によるコスト増だけでなく,排水処理施設への負荷の増大による浄水処理への影響など大きな課題がある.また,十分な接触時間をとれないことから,粉末活性炭の注入率を高めることによって対応するなど,吸着能力を有効活用できていないという課題も抱えている.オゾンや粒状活性炭による高度浄水処理においても,臭素酸など解決すべき課題を抱えており,新たな処理方法の解決が求められている.本研究では市販の粉末活性炭より遥かに粒径の小さい微粉炭を膜処理の前処理として用いた処理システムにおけるジェオスミンとその生成原因藻類であるアナベナの除去について検討した.その結果,サブミクロン粒度まで微小化した微粉炭は,少添加量,短時間で吸着が進行し,市販粉末活性炭に比べてジェオスミン除去性が格段に優れていることが分かった.さらに,膜の前処理としての微粉炭の添加は,薬品洗浄までの長期的膜間差圧上昇のみならず逆洗浄までの短期的膜間差圧上昇の抑制にも効果的なことが分かった.また,自然由来有機物質(NOM)の吸着性をポリスチレンスルホン酸(PSS)とポリエチレングリコール(PEG)をモデル物質に用いて検討した。その結果,活性炭の微粒度化によりPSS(分子量1800,4600)の吸着容量は増加するが,分子量の300,1500のPEGに対しては吸着量増加効果は見られず,分子量3000,8000のPEGにおいても吸着量増加はわずかであった。したがって,NOMに対する微粉炭の吸着量増加は,分子量のみならずNOMの親和性などの化学的性質によるものと考えられる。
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