研究概要 |
市販の粉末活性炭(Powdered activated carbon, PAC)を微粉砕し粒径が1μm以下のサブミクロン粒度の微粉炭(Suoper-powdered activated carbon, S-PAC)を製造し, 臭気物質ジェオスミンや2-メチルイソボルネオール(2-MIB), 自然由来有機物質(NOM)の吸着性, セラミック膜ろ過の吸着前処理として用いた際のそれらの除去性, および微粉炭添加が膜ろ過のろ過性に及ぼす影響について検討した. その結果, サブミクロン粒度まで微小化した微粉炭は, 少添加量, 短時間で吸着が進行し, 市販粉末活性炭に比べて, NOM やジェオスミン, 2-MIB の除去性が格段に優れていることが分かった. さらにNOM の吸着除去性の向上には, 吸着容量の増加によるものであることを見出した. 特に, NOM の中でもSUVA 値が高いフミン質的なNOM において吸着量の増加が顕著に見られた. 活性炭の微粉砕の前後で活性炭内部の細孔分布・容量に変化が見られず, 吸着容量の増加は, 高分子モデル物質ポリスチレンスルホン酸(PSS)では見られ, より分子量の大きいポリエチレングリコール(PEG)では見られないことから, 吸着容量増加は吸着質の化学的な性質が関与していると推定された. ジェオスミンを対象に微粉炭に対する吸着速度をhomogeneous surface diffusion model (HSDM)とbranched pore kinetic model (BPKM)で解析したところ, 活性炭粒子の微粒度化に伴い, 吸着除去速度の律速段階が, 粒子内のマクロ孔やメソ孔を通じた半径方向の拡散から, ローカルなミクロ孔の拡散へ移行することがわかった. そのためHSDM では見かけ上拡散係数が減少することになる. 微粉炭の粒度と吸着除去性の関連をBPKMで検討し, 除去対象をジェオスミンに想定した場合の最適粒径は1μm付近であり, 1μm以下まで粉砕しても除去効率の向上はあまりないことがわかった. 微粒度化は市販の木質, ヤシ殻, 石炭系のすべての活性炭で有効であることも確認した. 膜の前処理としての微粉炭の添加は, 薬品洗浄までの長期的膜間差圧上昇のみならず逆洗浄までの短期的膜間差圧上昇の抑制にも効果的なことが分かった. この理由は微粉炭添加により膜ファウリング物質が活性炭へ吸着されるためと, 微粉炭添加により粒子間の衝突頻度が高まりさらに凝集剤消費物質であるNOMが予め吸着除去されるためにより大きな透水性の高いフロック粒子が形成されるためであることを明らかにした.
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