研究概要 |
東京都区部の103地点で採取した地下水中の溶存鉄濃度と酸化還元電位(Eh)を測定した。本研究で測定した溶存鉄は,各種水質基準となっている総鉄に含まれる懸濁態の鉄を含まないことに留意を要するが,本研究の調査結果を水質基準値に照らすと,全体の55%(57地点)で溶存鉄が0.3mg/L(水道水質基準,工業用水道供給標準水質)を,全体の69%(71地点)で溶存鉄が1.Omg/L(冷凍空調機器用冷却水水質基準)を下回っており,多くの地点で各種の地下水利用が可能であると考えられた。特に,不圧地下水では武蔵野礫層,被圧地下水では上総層群を帯水層とする地下水において,溶存鉄が他の帯水層に比べて低かった。溶存鉄は酸化還元電位(Eh)と関連があり,武蔵野礫層や上総層群を帯水層とする地下水ではEhが比較的高く,溶存鉄濃度が低かった。一方,有楽町層や東京層を帯水層とする地下水ではEhが低く,鉄(II)を主形態として基準を超える溶存鉄濃度が観察されたため,こうした地城では使途に応じた適切な処理施設を設ける必要があると考えられる。これらの地下水サンプルのうち16サンプルについて、フッ素系の界面活性剤PFSsの分析を行ったところ、すべてのサンプルからPFSsが検出された。このうち、PFOSや短鎖のPFCAsが地下水から多く検出された。PFSsによる地下水汚染の起源としては、下水管などから浸出した下水が地下水へ浸透していることや、道路排水などが地下水に浸透していることなどが示唆された。
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