本年度は、合流式下水道雨天時越流水に含まれる汚濁物質の東京湾への主要な流入経路である隅田川を対象として、晴天時、雨天時の汚濁物質の濃度変化の調査、東京湾における汚濁物質動態モデルの高度化を行った。 隅田川永代橋において、雨天時(2008年10月14日-15日:総降雨量10mm)、晴天時(2008年10月22日-23日:先行晴天日数2日)の2回採水を行った。採水は30分から1時間に1回の頻度で24時間連続して行い、一般水質項目に加えて、健康関連微生物(大腸菌、大腸菌群、ウイルス)や重金属類の濃度変化を測定した。同時に、隅田川白鬚橋に設置したドップラー流速計で流速・流量を算定した。その結果、濁度やアンモニア性窒素は雨天時の方が晴天時よりも濃度が有意に高かったのに対して、全リン、全窒素、硝酸性窒素などは逆に晴天時の濃度の方が有意に高かった。健康関連微生物の調査の結果、雨天時には大腸菌濃度が上昇する傾向が見られたが、アデノウイルス濃度はほぼ一定値を保ち、健康関連微生物ごとに動態が異なることが示された。重金属類については、晴天時と雨天時で濃度レベルは、ほとんど変化なかったが(CSOの測定値と比較すると、1オーダー程度低いレベル)、CuとZnでは降雨初期時の濃度が高く、路面排水等からの影響が示唆された。 また、東京湾における汚濁物質の動態モデルについては、隅田川およびポンプ所からの汚濁負荷量(大腸菌群)の与え方を改善し、モデルの高度化をはかった。その結果、お台場周辺海域においては、ポンプ所からの負荷の影響が大きいこと、潮汐によって大腸菌群がダイナミックに移動することが示された。
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