研究概要 |
本研究の目的は,水系での微量環境汚染物質の動態を吸着と分解に分けて評価することである。本年度は,多環芳香族炭化水素類(PAHs)の底質・水系での挙動を調べるために,名古屋港において,調査を行った。その結果,底質での土粒子-間隙水の間や水系での浮遊粒子-溶存態間の濃度関係は,これまで知られているKow, Kocの間の相関式で概ね記述できるが,底質上部において,間隙水濃度が平衡関係で考えられるよりも高い傾向があり,このため,底質に降り積もった粒子状物質に吸着のPAHsの一部が間隙水に移行し,海水中に回帰する現象が見られた。また, PAHs類の底質での生物分解は無視し得る程度の速度であることがわかった。一方,水系での管理技術としては,活性汚泥系に着目し,無機塩のみで培養し硝化菌を卓越させた活性汚泥での医薬品類の分解を調べた。既存の従属栄養細菌を多く含んだ活性汚泥よりも,難分解性の医薬品の一部は,硝化菌主体の活性汚泥によりより早く分解することが明らかになった。また,硝化菌の硝化をATUで阻害すると,分解活性が大きく影響を受けることから,硝化におけるアンモニア酸化酵素が医薬品の分解にも関わっていることが示唆された。また,廃棄物処理系においても, VOCの排出に関する調査研究を行った。その結果, VOCの排出の多い処分場の特徴として,廃棄物の生物分解により発熱を生じている処分場であることが明らかになり,熱により化学物質が固体から気体へ移行していることが明らかになった。また,ビスフェノールAなどについては,熱により固体から液体への化学物質の移行が明らかになった。
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