研究概要 |
本研究の目的は,水系での微量環境汚染物質の動態を吸着と分解に分けて評価することである。水系での評価として,昨年度までの硝化菌での解析をアンモニア酸化酵素の働きの点から整理し,それに加えて,真菌類(白色腐朽菌のTrametes versicolor)を用いた検討を行った。真菌類による医薬品分解実験では,活性汚泥系とは異なり,ジクロフェナク,インドメタシンなど活性汚泥系では十分に除去されないものが体外酵素によって分解され,また,体内への吸着を含めるとさらに多くの医薬品が分解された。また,膜分離活性汚泥法での検討では,カルバマゼピンなどの通常の活性汚泥法で除去できない物質は,実験開始当初は吸着によって見かけ除去できるが,長期の運転を継続するとやがて細胞内への取り込みが飽和し,汚泥を引き抜かない運転では除去できないこと,活性炭を膜分離活性汚泥タンクに添加すると,経済的な添加量でも50%程度除去をすることが可能であることを示した。疎水性化学物質の例としてPAHを用いた底質を含む港湾堆積物系での検討では,マスバランスモデルを作成し,名古屋港を例に計算を行い,流入負荷の約半分がそのまま港外へ流出すること,PAHの環数によって揮発する割合が0-10%程度と見込まれること,残りは,最終的には,堆積物に移行するが,堆積物から一部が拡散溶出し,また,拡散分よりはるかに大きい量が底泥粒子の巻き上げによって移動することを明らかにした。
|